博多大丸社長森川善博氏
1945年、徳島県生まれ。徳島県立鴨島商業高校卒。百貨店の持つ華やかさにあこがれて63年に大丸入社。東京店長などを経て、2002年に大阪・心斎橋店長。03年に執行役員、06年に常務執行役員。06年6月から現職,ドラゴンクエスト10 RMT。神戸店で売り場を指揮する営業企画部長だった95年に阪神淡路大震災を体験。被災した同店を店員全員の力で再建させた経験から「人間の力は無限だ」が信条。「人中心の経営」と、高品質な売り場づくりを目指す。福岡での勤務は初めてだが、福岡の人々の温かい人情が気に入っている。趣味は画廊巡りと映画観賞,カバル RMT。高校生のときは、画家を志したこともある多田森川社長は大丸入社後、神戸、東京、大阪など各地で活躍されてきました。福岡には、どのような印象をお持ちでしょうか森川福岡は、さまざまな伝統や文化を持つ一方で、外に開かれたオープンな街だと思います。芸術やファッションなどの文化情報は、東京や大阪、神戸など大都市とほぼ同じレベルですそれだけに、住民の方々が、自分たちの街に誇りを持っているのを強く感じます。山笠では、親から子、先輩から後輩に、人間関係のマナーなどを伝えると聞きます。地域社会が、教育の場になっているのは素晴らしいですね多田そんな福岡の中でも、天神地区は九州随一の商都として、人々の熱い視線を集めています。その魅力はどこにあるとお考えですか森川百貨店・専門店など商業施設のほか、映画館など文化施設が充実しています。西鉄電車やバス、地下鉄など公共交通機関も発達していて、博多駅と福岡空港へのアクセスがいいことも魅力ですまた、天神ではこれまで「流通戦争」と呼ばれる激しい競争が何度も勃発(ぼっぱつ)し、各商業施設が切磋琢磨(せっさたくま)しながら、街全体の魅力を高めてきた歴史があります多田2011年春に開業する予定の新博多駅ビルには、阪急百貨店の出店が決まっています。百貨店など商業施設間の競争が、一段と激しさを増しそうです森川競争なしで、街が活性化することはあり得ません。街が活性化して楽しくなれば、その恩恵を受けるのはお客さまです。福岡の商圏にとって、外部からの刺激は歓迎すべきことですただ今後は、少子高齢化などに伴う消費構造、ライフスタイルの変化もあり、われわれが過去に経験したことがない競争環境に入るとみています。われわれが目を向けるべき相手は、お客さまです。足元の課題をしっかりと見据え、お客さまが求める店をどうつくり上げていくか。それが結果的に、阪急対策になるはずです多田そうした経営環境の変化をにらみ、博多大丸はこのほど、07年度からの売り場のリニューアルを中心とした「3カ年マスタープラン」を発表されました。その狙いや今後の戦略をあらためてお聞かせください森川洗練された大人のため、心豊かな暮らしを支援する百貨店を目指します。目標は、都心店にふさわしい品ぞろえやサービスでお客さまに選んでもらえる「心地一番店」です。リニューアル計画では「クラシック&モダン」を店舗コンセプトに、3年間で総額40億円を投じ、売り場を大幅に改装します本館地下1階の婦人靴・ハンドバッグ売り場については、マスタープランに先立つ形で2月に改装を終えましたが、おかげさまで非常に好調です。新たなターゲットに設定した30—40代前半のお客さまがぐっと増え、3月以降のフロア売上高も20%程度伸びました次は、7月から8月にかけ「高感度ファッション館」と位置付けるエルガーラ(東館)の1階を改装する計画です。7月7日には「ルイ・ヴィトン」が売り場面積を1.4倍に増やして改装オープンします。パサージュ広場も、花など植物を配置し、温かみのあるコミュニケーションを図る空間にしようと考えています多田11年には、天神の南に位置する渡辺通地区の第1弾再開発も完成する予定で、天神地区の人の流れが大きく変わることも予想されます。天神対博多駅という競争の新たな競争の構図も生まれると思います。天神地区が目指すべき方向性や未来像を、どのようにお考えですか森川九州新幹線の全線開通、山陽新幹線との相互乗り入れなどで、福岡を訪れる人が増えることが予測されます。天神地区と博多駅地区がそれぞれの役割を果たせば、福岡が一段と発展するに違いありません天神は、商業施設の規模や多様性の強みを発揮できるはずです。ただ、「休む場所が少ない」「落ち着かない」などの要望があるのも事実です。今後は、ヤングもシニアも楽しめる洗練された街を目指し、親切な街をつくり上げるべきだと思います博多大丸としては、3千人の従業員の一人一人が進んでごみを拾うなど「おもてなしの心」を持つことから始めるつもりです。天神地区のまちづくり団体「WeLove天神協議会」の活動にも積極的に参画し、天神の発展に少しでも貢献できるよう努力します多田それは素晴らしいお考えですね。西日本新聞社としても「新聞」というメディアを最大限に生かしながら、福岡の街づくりを手伝いたいと考えています博多大丸は、これまでも時代の先陣を切る店舗運営で、さまざまな実績を積み上げてこられています。特に経営の中心に「人」を据えている点が印象的です。そこには、どのような思いが込められているのでしょうか森川百貨店は労働集約型産業です。人の成長があって初めて、企業も成長します。当社が今後を勝ち残っていくには、現場の販売員の高い情報力に加え、従業員が地位や立場にとらわれずに課題を話し合え、新しいチャレンジが評価される企業風土を確立することが大切ですまた、従業員には常々、街に出て話題の店をよく観察するように言っています。われわれのターゲットの客層がどんな店を訪れ、どんな楽しみにお金を使っているのか、肌で感じることが大事です。ただ、そういうのは男性より女性の方が得意ですね。実力ある女性の登用は積極的に進めるつもりです多田博多大丸の近年の業績には目を見張るものがあります。直近の決算では、売上高が約760億円で、経常利益が約47億円。これほど高い利益体質をつくり上げるには、並々ならぬご努力があったことでしょう大丸は今年、創業290年を迎えられました。「ときめきのDNA」というキャッチフレーズでアピールされていますが、再認識されている理念などはありますか森川大丸は1717年の創業以来、企業理念「先義後利」を守ってきました。今で言うCSR(企業の社会的責任)を、時代に先駆けて実践してきたという自負があります。これからもこの企業理念の下、地域の皆さまから「なくてはならない」と思っていただけるような店を目指し、あらゆる努力を続けていきます1952(昭和27)年に設立、福岡市博多区呉服町に店舗を構えた。その後、天神地区に進出。同市中央区天神1丁目に本館と東館、2店舗を持つ。洗練された大人のための「高質な暮らし・心地百貨店」をテーマに、お客さまにわざわざ来店いただける「マインドシェアNo.1/心地一番店」を目指している。今年度から3カ年マスタープランがスタート。約40億円をかけて、本館と東館を順次リニューアル。「クラシック&モダン」を掲げて、20―30代の若い客層の取り込みを狙う。具体的には、紳士服売り場を集約・効率化し、成長性の高い「美と健康」、「雑貨」や「特選ゾーン」を拡大強化。全館各階に買い物客の相談に応じる「コンシェルジュ」機能を充実させ、ホスピタリティーの向上にも力点を置くなど、思い切った店舗改革に乗り出している。
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